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夕 凪 大 地

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「死神ルック 7」

6で、ストーリーの流れは決まったとかえっらそうに書きやがりましたが、完全にベタな展開です。
あんまり頭使ってないのがバレバレです。
皆様の予想通りです。

と、一生懸命つまらなさをアピることで、「あれっ思ってたよりはひどくなかったなぁ」っていう騙された満足感を引き出す作戦を行使しますすいません。


やっぱ鎌は要ったよなぁ…。

それか悪魔の黒いこうもり羽…。

100歩譲っても頭に悪魔の角みたいな触覚みたいなひょろっとしたやつとおそろいのしっぽを付けとけばよかったですね。
そんで黒基調チェックプリーツのふりふりミニスカに黒ニーソ(笑)


あ、そうか。
私は小悪魔ルックを書きたいのか。
今回は死神ですので、小悪魔女装はまたの機会に持ち越します。←女装て




 死神はなおも説明を続ける。
「僕ら死神は生あるものすべての死を管理しているつもりだった。けど、生き物が自らを死に至らしめることは想定されてなかったからね。人間くらいだよ、死にたがる生物なんて。おかげで、人間が食物連鎖の箍を外して蔓延り出した数千年前から、自殺者が一人出るたびに世界の重量を保つ運命が少しずつ乱され始めた。それがこの半世紀で激増。僕の管轄下にある東経百三十五度地域、あんたたちの区分けで言う日本国だけでも年間三万人以上にのぼる。こっちは人口爆発だけでも手を焼いてるってのに、まったくふざけてるとしか思えないね」
 死神は立て板に水のごとく滔々と要領良く話す。だがいわゆる話し好きな人の話し方では決してなかった。彼は息継ぎをあまりせず、すらすらと淀みない一本調子で話し、声こそ明瞭で聴きやすいものの相手にとって聴きやすくなるよう心がけている内容ではない。
 そこから俺は彼の性格についてまた多くを知ることができた。彼は数値を好む典型的な学者肌だ。若干皮肉げな視点で物事を見ている。そして彼は、他人の返事を求めていない。
「多すぎる例外に乱された運命はどう歪む? それが今のあんただよ。あんたの予定生存期間へ皺寄せが来た。しかも、一度定まった死の時刻は何をどうしても覆らない。あんたはこのままじゃ確実に運命へ殺される」
 彼が一旦呼吸を挟む。俺は彼の薄い唇を注視する。
 ぎょっとした。彼がそこでふと、悲しそうな顔を、表したように見えたのだ。彼が今ここで悲しむ必然性があるとすればおそらく俺が死ぬことだ。彼は俺の死を悼むのだ。
 俺は自分に落胆するほど衝撃を受けた。俺がこの二十分程度で捉えたと思っていた彼の像はまったくの虚像だったのか。俺の人を見る目はすっかり曇っていたか。
 違う。最初からこれを知っていたのだ。出会った瞬間、彼の表皮に上る棘と内面にそっと横たわる花を。だから俺は彼に惹かれた。鋭い優しさがただただ綺麗だと思ったのだ。
「――けれど必ず、死なせない。僕があんたを守ってみせる」
 彼ははっきり言い切った。彼の敬虔な眼差しが、与えられた使命をストイックに完遂する切実さに満ちていた。彼に指示を請う俺の声は、自身の制御及ばぬくらい、恋の感動に震える。
「俺は今から何をすればいい」
「……信じるんだね。僕を」
「ああ」
 信じていなかったのは彼の方だ。もっと詰られたり馬鹿にされたり、信じてもらえなかったりするかもしれないと、まだ俺のことを疑っていたのだ。
 死神は暫時目を伏せた。金茶の睫毛が頬に長い影を落とした。沈む夕陽はビルの屋上から重石のように大きく真ん丸に見え、住宅街を蛇行する一級河川へ、彼の頭髪と同じ金茶の光を零している。
 彼が再び顔を上げた時、俺はゆるぎない彼の決意へ圧された。
「あんたには、ここから飛び降りてもらう。自殺することで不本意に定まった死の運命を捻じ曲げる。でも、死なせないよ。僕があんたを阻むから」
 俺は頷く。彼も頷く。彼が懐中時計を翳し、その秒針を読み上げる。
「あと四十秒。……三十五、三十四、三十三、三十二」
 彼の声を背中に受けて、屋上の縁に俺は立った。ビルの外壁を滑るように下から風が吹き付けた。もし彼が俺を助け損ねたとしても、俺は彼を恨めないだろう。むしろ死そのものを恨まない。これからやりたかったことはたくさんあるが、どうしてもせねばならないことはないからだ。俺の代わりはいくらでもいる。俺の死を悲しんでくれる人もちゃんといる。だから俺は、俺は、
「……待て……待ってくれ!」
 俺は後ろを振り返った。一つだけやり残したことがあった。死神が驚きに数え上げる声を詰まらせる。足早に戻るとその細い顎を持ち上げて、俺は彼の瞠られた瞳を狂おしい思いで覗き込んだ。
「待てないよ……あと十秒」
「一秒でいい」
 彼の唇へそっと触れる。唇で。
「――君を愛してる」
 踵を返した。大またで走った。三歩目が地面の最後だった。迷わず四歩目を空へ踏み出し、走り幅跳びの選手のように西日へ足を蹴り上げた。
 恐ろしいほど、怖くなかった。


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