スランプ解消に、３０分執筆タイムトライアル。
結果１時間もかかってしまったけど楽しかった。
テド←よん風味です。
「…テッド」
キキョウの食いっぷりは凄まじい。
食堂でわざわざ俺の向かいに座りやがって、キキョウは松ランチ竹ランチ梅ランチを一セットずつ完食している。メンチカツ唐揚げコロッケと揚げ物を続けざまに放り込んだ唇が油にてらてら濡れている。
でもこいつ、汚くねぇんだよな。 普通、大食漢の食べ方ってのはライオンが肉を食いちぎるみたいな、ぎざぎざの噛み痕が汚く残って食べかすもあちこちに落っこちて、うーん、あんま見たくない光景だと思う。少なくとも俺は眉を顰めて席を立つ。
だけどキキョウはたいていのものを丸ごと口へ放り込む。噛みちぎらないのだ。リスっつうかフグっつうか、ほっぺたはち切れそうに膨らませて、非常に咀嚼しにくそうだ。そんでキキョウはそれを大ざっぱに数回だけ咀嚼すると後は勢いよく飲み込んでしまう。多分ほとんど原形のまま、食べるというより胃へ流し込んでいる。
だからキキョウの使った食器は使用前みたいにぴっかぴかだ。食べ散らかされた感じがしない。食べかすもほとんど落ちていない。
「…えっと、……あの、テッド？」
絶対一口で食えねぇだろっていうフランスパンとか魚の姿煮とか、どうすんのかと思って見てたらキキョウは綺麗に切って食べた。さすが無敵の双剣使い、ナイフ捌きが半端ねぇのな。とはいえ切り分ける一口分が俺の倍以上、下手したら三倍近くも大きいのはご愛敬だ。
あ、俺、今気付いた。キキョウは口で、前歯で、噛み切る食べ方をしないのだ。
「…テ、ッ、ド！」
まんじゅう二つにランチ三人前食ってから食後のデザートまで食うの。お前やめとけよ、それ暴飲暴食っつうんじゃね。
「…ちょうだいっ、ひとくち！」
あー俺のマグロ丼！ トロんとこ！ てンめ一口っつってどんぶり半分食ってんじゃねーか！
しっかし米はこいつ食うのうまくねぇな。ご飯つぶ顎にくっ付けてやがる。濡れた唇のすぐ側に一つ、舌を伸ばしてもうまく取れない。キキョウは俺のトレーにどんぶりを返しながらはにかむ。
いやな、お前な、ンなうるうるな目ぇしてもだな、俺が米粒取ってやったらさっきからびしびし浴びてる視線がさらに痛くなる。俺この船内で完全アウェーだぜ。ただでさえ薄気味悪い真持ちって触れ込みなんだから。
でも。
「さんきゅな。キキョウ」
「…うん、……うん？」
「ん。お前のおかげ」
お前のおかげで、やっと食欲が湧いてきた。今日も飢えずに済みそうだ。
うちのよんちゃんはギャルそねみたいな食べ方をすると思います。
いいよね、あれ。
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