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夕 凪 大 地

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「宝石の檻」

坊ルクエロがすごくすごく難しかった(>_<)

エロっていうよりこの2人は清らか! 愛の結晶! ぴゅあ! みたいな感じを書きたかったのに、何だか頭の沸いた文になってしまいました…。
二人とも外見は10代ですが実年齢は40歳前後、を想定して書いております。

一応、ぬるすぎですが一応、出すもの出してるのでr18です。








 ルックを滅茶苦茶に泣かせたくなる。
 アスフェルはそういう凶暴な自分に気が付いている。そして、うまく飼い慣らしている。たとえばルックをべらぼうに甘やかしてまんざらでもなさそうな顔をさせてみたり、あえてルックを挑発する物言いで彼のただでさえ短い堪忍袋の尾を切ってみたり。そうやって泣かせる代わりに他の感情を高ぶらせ、ああ、この苛烈さは俺が引き出したものなのだと、暗い喜びに浸ることがある。
 しかしいずれ、それでは満足できなくなるのだ。涙脆いアスフェルと違ってルックは非常に淡泊な質だから、苦痛にでも感動にでも泣きやしない。あの、若葉を溶かした色の瞳から溢れ出し、彼の頬へ刃物のように鋭い縦筋を刻む涙を、アスフェルはほんの数えるほどしか目にしたことがないのである。
 そこでアスフェルはルックを抱く。好きだよ、などと陳腐な言葉を湯水あるいは札束のように使って、もちろん陳腐ながらも誓って嘘偽りない本心であるが、そういういかにも陳腐な本音でもって彼と無理やり体を繋ぐ。
「もっと力を抜いて。足を開いて」
「やだ……むり、も、むりだから……」
 文字通り、無理やりだ。だってルックの美しい肢体は男を受け入れるようにできていない。ルックはことの最中、「やだ」「むり」「アスフェル……」の三語を順繰りに発して耐えている。苦しいのだろう。屈辱でもあろう。彼は今にも紋章を暴走させそうな顔をして、それでも必死にアスフェルの愛撫を受け入れている。
 それなのにアスフェルは、この局面でこそルックを滅茶苦茶に泣かせたくなるのだ。
「ルック、俺に掴まって」
「むりッ……ぁ」
「あと少し。もう少しだけ深く入るよ」
「や、ぁ、ン! んぅっ……!」
「入った」
「アス……っむり……!」
 この凶暴性を、ルックはきっと理解できないだろう。理解するため駆使すべき思考力をアスフェルが根こそぎ揺すぶっている。だからルックはひたすら首を振るだけだ。髪をくしゃくしゃに乱し、生っちろい額へは涙のような汗を浮かべて、アスフェルの背中にぎゅっとしがみ付いて耐えている。ああ、その指先をどうか想像してみてほしい。アスフェルの背へ食い込んでいる、折れそうに細い彼の指先を。食い込んだ爪の細かく震える感触などは、如何とも表現しがたいものだ。アスフェルはその甘美な味わいにほくそ笑む。
 ところで、ルックという男は実に学者肌で、いつ何どきも冷静さを最大の美徳となす性格である。だが、そんなルックだからこそ、ひとたび冷静さの塗装を剥がすと存外脆くなり得るわけだ。といってもルックから冷静さを失わせるのは至難の業で、アスフェルはじっくり、アスフェルの方が焦らされすぎて苦しくなるほどじっくりと、ルックを快楽の底へ追い詰める。
「ルック、気持ち良い? ここ?」
「んーッ……! あ、やだ、やだっ! アスフェル……!」
 そうして長い雌伏の末ついに、ルックの理性が陥落する。つまり、ルックの局部が彼の意思に反してかたくそそり立つ。
 彼に言わせればこの瞬間は、そこが不意に分裂したような恐ろしい錯覚を伴うらしい。肉体が意思という制御を離れてしまい、いつどうなるのか予測が立たなくなるのだとか。その不確かさは彼を大いに戸惑わせ、同時に冷静さを失わせる。だからルックは自身の変貌に怯えながら、何とか冷静さを取り戻そうとする。
 しかし、取り戻せはしないだろう。むしろ取り戻さぬようにアスフェルが全力でルックを揺さぶっている。
「やだ……アスフェ……ぅ」
 ルックは声を上ずらせる。震える唇を噛みしめる。そしてルックは、目線を泳がせながら、次第に瞬きをするようになる。瞳は苔生す湖水のようにたぷたぷと波打っていて、虹彩の輪郭がぼやけるほどだ。
 あと少し。もう少しだ。
「愛しているよ、ルック」
「んッ」
「好きなんだ。心から。本当に」
「ぃ、あぁ……っ!」
 世界中の札束をもってしても足りないくらい愛を浴びせ、ルックからどんどん冷静さを剥ぎ取る。するとルックは恐慌を来たし、アスフェルの背中や肩を引っ掻く。たまにアスフェルを唇だけで噛みもする。繋がった部分はルックを煽るようにかしましい水音を立てて止まず、ルックは絶頂へおののきながら細っこい二の腕へ鳥肌を立てる。
「ルック」
「ア、ス……!」
 そうしてついに、アスフェルの待ち望んだ涙がやって来る。
「ルック、好き。愛してる。かわいいよ。俺の宝。俺のすべてだ」
「やぁっ……」
「俺を感じて」
「む、り」
「好きだと俺に返さなくていい」
「アスフェ……ッ」
「好きだよ。ルック、俺は君のすべてが」
「やだ……!」
 ルックはぎこちなくしゃくり上げる。潤み切った瞳の表面がみるみる盛り上がり、限界を超えて溢れ出す。まるで宝石だ。ともすれば指で摘まめそうなほど大きい。アスフェルの与える灼熱と睦言が、ルックの受け入れられる許容量を上回ったのだ。
 これだ。この涙、アスフェルはこれが見たかった。
 だがその頃にはアスフェルも完全に頭が煮えくり返っている。ルックが好きで好きでたまらない。かわいい、愛しい、たった一つの永遠だ。ルックはもっとこの愛情に溺れて良い。染みの一点も混ざらぬ純度でルックが好きだ、大好きなんだ。
 アスフェルはルックを鞭打つごとくルックへ激情を突き入れる。ルックはか細く啜り泣き、ひたすら首を振っている。ルックが瞬きをすると涙は割れて、まるで宝石を次々砕いているようだ。涙のしずくはルックのこめかみから耳の裏まで流れ込んでいる。髪の生え際で産毛が濡れてたわんでいる。
 舐め取るといやに生温かいしずく、アスフェルの生々しい愛情に似ている。ああ、この思いが涙となってルックから溢れ出るというのなら、それ以上に注ぎ込もうじゃないか!
「やだぁ、あ、ア、やだ……!」
 ぼろぼろ泣きじゃくり、混迷の内にルックが達する。それを見届けてからアスフェルもようやく精を吐き出す。ルックへ注ぎ込む感触をわずかも漏らさず味わって、余韻にひくつく内部を宥めるため、時間をかけて分身を抜く。
「……頭が痛いんだけど」
 泣き止んだ、いや失敬、嵐のようなことを終えた後のルックは、目を真っ赤に腫らしている。そしてアスフェルに小さく恨み言を述べる。
 痛むというより、少し発熱しているのかも知れないな。何せあれだけ泣いたんだから。そう口を突いて出そうになるが、アスフェルはそれを賢明にこらえる。彼に面と向かって泣いたなどと指摘をすれば、どんな惨事が待ち構えているか。ここは彼の自尊心を慮って軽くほほ笑むに留めるのが吉だ。
「あんたのせいだからね」
「ん? そうだな、俺のせいだ。ルックに負担を強いた」
「じゃなくて」
 ことを終えた後のルックは可愛い。常の苛烈な彼も美しいが、情事後は少し腑抜けに見える。あえて挙げ足を取られに来るような隙があるのだ。
「僕が楽な泣き方を覚えたらどうしてくれんのってこと」
「……それは」
「困るでしょ」
「困る、というか」
 それは嬉しすぎる。
 言えば惨事だと分かっているからアスフェルは本音を飲み下す。しかし表情までは取り繕い切れず、やむなくルックを抱きしめることで顔を見られないようにする。
 ところで、御存じのようにルックという男は消去法をよく使う。例えば明日の献立なんかを考えさせれば、最も食べたいものから最も苦手なものまで膨大に羅列し、最も食べたいものから順にその実現不可能性を挙げ連ねて、結局、最も苦手なもの以外を選択肢から消してしまうような男だ。彼は常に不幸でいなければ不安だと考えているらしい。
 そんなルックが、楽に泣くとは。
「嬉しいよ。俺は」
「ふぅん」
 腕の中のルックは、アスフェルの胸に顔を押し付けたままである。そっけない相槌を打つも、内心いろいろと選択肢を増やしては消しているのだろう。そうやって選択肢を絞り込んだ結果、常なる淡々とした、だいたいどんな不幸が起こっても想定内だからと言って驚かないルックに戻るのだ。もう涙など見せやしまい。
 ルックの涙はかくも得難いものだから、アスフェルは後になって一抹の罪悪感を覚える。彼が見られたくないだろうものを見てしまっただけでなく、アスフェルは、それを無理やり暴いてしまったのだ。明日、ルックが変に拗ねなければいいが。
「明日は雨だろうか」
 アスフェルが何気なく尋ねるとルックは、窓を見もせずに「雪ならいいね」とだけ言った。
「雪?」
「うん。だって、綺麗じゃない」
「……そうだな」
 あれほど濡れていたルックの産毛は、徐々に立ち上がりつつある。


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