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夕 凪 大 地

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「希い 2」

って、下の記事に直接繋げて書けよ!
などと冷たいことを仰らないで下さいましね。
あの雰囲気にどうしても入れられなかったネタでして、後書きみたいなものだと思ってくだされば嬉しいです。

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * *


「あんた、何考えてんの」
病棟を出た途端、扉の横の壁へ凭れかかってアスフェルを睨み上げてきたのはやはり小さな風の御子。
分かっていても予想通りの発言を聞くとなぜだか無性に恋しく思える。それは、死にゆくものたちの悲嘆と苦痛が蔓延していた一種異常な空間から、ようやく平穏な世界に戻ってきたという確かな実感だ。こんな感触を味わうことが彼らにひどく失礼で、だからアスフェルは幾分暗い口調で返す。
「……何も」
ルックは、そこまで見越してでもいたように、唇を右側だけきつく吊り上げた。
「いくら僕がわざわざ風を纏わせてあげてるからってね、あんな毒の充満してるとこで深呼吸するどころか毒物に直接触る? あんた馬鹿? 死にたいの?」
「ルックのおかげで助かったよ」
「僕の風じゃなかったら確実に死んでたね」
おだてておけば和らぐ風はこの期に及べどまた然り。ルックが呆れたように肩を竦めて嘆息し、アスフェルはふっと微笑する。
「さすがは魔法兵団のアイドル殿でいらっしゃる」
皮肉れば途端に毛羽立つ風もまた然り、だ。ルックは子猫のようにぎんと翡翠を閃かせた。壁から背中を引き剥がし、あっという間に踵を返す。
「またそういう僕が苛立つって分かってることをわざとへらへら口にする。いい加減あんたの自虐願望に応えて本気で切り裂いてやりたくなるのさえ馬鹿らしくなってきた。とっとと行くよ」
「待って」
呼び止めれば無視しきれない不器用さもまた然り。アスフェルの焦りを含んだ声音にしっかり反応してくれる。ルックは嫌々足を止め、振り向かないまま風をやんわりそよがせた。
「荷物ならあんたの付き人が全部持っ」
「付き人じゃなくてグレミオ。そうじゃなくて。――ルック」
「……な、何。何か用?」
アスフェルは真面目に名を呼んだ。それだけで何かを察してくれて、ルックはだからこそ怖気づく。
これこそルックの本質であろう。
嘘の吐けないルック。嘘を吐く代わり刺々しい毒舌をもって煙に巻き、しかしアスフェルにとってはその奥へ秘められた優しい本音を手繰り寄せるのにさして手間がかからない。
そしてルックは、言葉の端々や言葉にされない曖昧な何かへ、ひどく敏感に反応してくる。何かがあるとはすぐに分かってもそれが何かを悟ることが人付き合いの苦手なルックには難しいからだ。
もう一階層下れば未だアスフェルにも見通せない檻があり、おどろおどろしい魔物の出そうな、或いは色とりどりの花吹雪が舞い上がりそうな、開けたくてたまらない気にさせる鍵が隠されていることをアスフェルは本能的に知っている。もしいつか暴くとすればそれはアスフェル以外にないと滅多に外れぬ勘が告げ、それまでどのくらい時間がかかるだろうと想像するのも楽しみだ。
名を呼んだきり反応しなくなったアスフェルへ、ルックは訝しげに顔を下から覗き込みつつぱちぱちと二度瞬いた。こういうところは無警戒にもほどがある。アスフェルは思わず両目を眇める。
「ありがとう、ルック」
「……行くよ」
虚を衝かれた翡翠が煌き、あまりの色彩に視界が眩んだ。
そっけない返事しか寄越さなかったルックは、頬のあたりを火照らせていた。


* * * * * * * * * * * * * * * * * * * *





結局坊ルク前提だったんですね。
そして前半部分でやたら坊つんが一応それなりに主人公の最低条件すれすれくらいには格好よいかもしれなかったのは、ルックの風のおかげなのでした。

当家妄想設定では、坊つんはほんとに涙脆いです。
やろうと思えば無表情を作ることも笑顔を作ることも得意ですが、彼にはほとんどその必要がないので、割と自分に素直です。
そういう、女々しいんじゃなくてちゃんと泣ける男って格好いいと思うんですけど!
どうしてかうちの坊つんは女々しく見えて困ったものです!
逆にルックはおとこのこだから泣かないよ。
ナニの時もああんとか女々しい声は出さないよ。(←某ERO王者様とのEROネタですいません)

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