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夕 凪 大 地

更新履歴 兼 戯言ブログ

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「薀蓄」

気づいたことがあります。

やっぱり坊ルクがいちばん書きやすい。

…何だそんなことって感じですか。

ルックのツンデレ度合いによって、つまり時代によってってことですが、すごく難産なときがあるのです。
あとぼつんの頑張り度合い、こちらは何ていうか常に私とぼつんとの駆け引きでして、私がここまでにしときなさいっていうゴーサインならぬストップサインをいつ出してあげるかなんですね。
そのストップラインが私の場合ぼつんとの交渉にある意味負けていつも似通ってしまうわけですが…あいつ際限ないからなぁ。


坊ルクに関してはほんと、彼らの日常をこっそり覗いた中から一部分だけ抜粋して書かせていただいてる感じなので、放っておくとどんどん話が進んでいつまでも終わらなかったりします。
楽しいんだけどそれは読者様に伝わらないよっていつも思います、すいません。

何だか愚痴に見えますが多分ノロケです、ね、ぼつん、今回私たちうまく結託できたよね(笑)



あ、パラレルです。




「はい」
 手渡すと、当然のように受け取った後、ルックはぽかんと口を開いた。出勤前の忙しい朝、マグカップから立ち上る湯気の次に静かな余白が暫時出現。玄関がしんとする。
 俺は靴べらを右足元へ差しこみながらルックの髪を梳いてやった。また櫛を通してないな。起床時間が遅いから。
「……なんで」
「分かったかって? あのな、それだけ着こんでぎっちぎちにマフラー巻いて懐炉を三つもポケットに入れて、分からなかったら俺はどれだけ甲斐性のない男なんだ?」
「そういうものなの?」
「それが夫の嗜みだろう。眠くならないものにしておいたから、昼食後ちゃんと三十分以内に服用すること。もし今以上にしんどくなったら必ず俺へ連絡を入れること。約束できるか?」
「……夫とか妻とか、僕がそういう言い回しを嫌うの知ってるくせに……」
「言葉の綾だよ」
 ルックはしょっちゅう体調を崩す。もともと体が強くはないのだ。春先にしては厚着のルックが風邪を引いただろうことくらい、今までのこの時期を思い返せばそう想像に難くない。そして俺は今まで風邪など引いたためしがないので、どこまで不快を我慢できるものなのか、実感としての見当をつけられないところが多少あるのだ。だから常に、きわめて慎重にルックの状態を見極めている。強制的にでも休ませるラインを俺が決めてやるためだ。
 指挿す頭髪にこもる熱――おそらく三十七度二分。唇は少し荒れているが目はまだ充血していない。ぎりぎりだろうか。
「薬は嫌いなんだけど」
「なら今日は欠勤するか?」
「だっていわゆる風邪薬は身体の諸症状を緩和す」
「薀蓄はいい。飲むか休むか、選択肢は二つ」
「……飲む」
 ルックは仕事人間だ。俺が口酸っぱく諭したところで絶対に会社を休みたがらない。すると、嫌でも薬を飲んでもらわないことには、俺自身が耐えられないのだ。もし他の男どもの前で気だるい表情でもふりまかれたら。または、他の奴の助けを借りて病院へ行くことにでもなれば。俺はちょっと、冷静なままでいられない。
「明日が日曜日じゃなかったら、ベッドに縛りつけてでも休ませるけれど」
「それ、監禁って言うんだよ」
「ルックが自主的に体を労われるなら俺も対抗手段を取らなくてすむのになあ。本当に残念だ」
「だからあんたがいるんじゃないの」
「……ん?」
「だから、あんたがそうやってうるさく言うから僕は自分の心配しなくていいでしょって」
 ――青天の霹靂だ。
 ルックは呆然とする俺から言葉と靴べらをもぎ取って、手早く靴を履いてしまった。履きながら飲みやすいドリンク状の風邪薬を鞄にしまい、ついでに家の鍵を出す。消灯を確認、留守電をセット。携帯電話をマナーモードに切り替えて、春一番の吹き荒れる戸外へと、重い扉を一息に開く。
 春風、春の匂い。
「うわ、沈丁花かな。そういえば下の公園に咲いてたっけ。ここまで届くんだ」
「……無意識? 天然?」
「なにがさ」
「その殺し文句」
 ルックには俺が必要だ、と。そう言ってくれたようにしか聞こえなかったのは決して俺の勘違いじゃあるまい。朝っぱらから、肌寒い曇り空を打ち消すルックの爆弾に、俺は耳たぶが熱くなるのをとてもじゃないが抑えられない。
「何ワケ分かんないこと言ってんの。行くよ」
「ルック」
「くっつかないでよ」
「出がけの抱擁」
「勝手にそんな習慣作らないの!」
「俺が妻でいいから」
「それ妥協案のつもり? あのねアスフェル、あんたに風邪が移ったら困るでしょ」
「……ルックううぅ」
「ちょ、気持ち悪! 何その発音!」
 頑張って屈んで顔を埋めてみたルックの首筋は、甘いような濁ったような特有の、風邪の匂いを漂わせている。
 俺はぎゅっと瞼へ力を込めて祈った。明日こそ天が晴れますように。暖かい陽気でルックの風邪がよくなって、そうしたら一緒に、バルコニーの植木鉢へ花の種をたくさん蒔こう。どちらが夫で妻でもいいから、ただルック、君とともに、いられれば。俺はますますきつくルックの肩を抱き締める。
 俺の強欲な腕の中で、ルックはそっと、柔らかい溜息を吐いて笑った。


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