風邪が治りました!
朝晩はノドが痛くなるけどもう平気!
おかげさまでようやく小小話再開です。
久々の2主。
ルックが詠唱し始めたのを背中で聞いて、前衛左に位置するリツカはぞっとした。
「たっっタンマっっ!!」
「……」
止めたところで素直に聞き入れるルックではない。ルックの額に宿す紋章、魔力を受けて蒼く輝く。波状にさざめき、明滅し、蒼い力はロッドと共鳴して揺れた。
「お願いルック、みんな死んじゃうっ」
リツカは同じ魔法による惨劇を過去に一度経験している。動物並みの嗅覚とでもいうべきか、ゆえにリツカは自らの危機を誰よりも俊敏に察知した。必死で中断を懇願する。
するとルックは伏せていた目をちらりと上げて、何とほのかに笑みを浮かべたではないか。リツカは思わず唾を飲む。タチの悪いいたずらを思いついたナナミがたまにこんな顔をするのだ。もちろん、姉のそれよりルックははるかに残虐である。ぞっとリツカの身の毛がよだつ。
「だめー! やめて、お願い!」
「……いいじゃない」
最後の一言を発する寸前まで詠唱は終わってしまったらしい。ルックは赤い舌を見せた。ロッドを掲げ、ぞっと身震うリツカへ小首を傾げてみせる仕草がどこか芝居がかっている。
「リツカ、知ってる? 六人のうち誰か一人でも生き残っていればこちらの勝ちになるんだよ。経験値もポッチも、敵が落とすアイテムも。みんなちゃあんと取得できる」
僕は怒っているんだよ、と翡翠の瞳が剣呑に告げた。
「ルックっっ」
「さあ、毒消しか封印球か、どっちを入手できるだろうね?」
歌うように囁くルック。さも楽しげにくつくつ細い咽喉が鳴る。
「――空虚の世界」
放たれる圧倒的な召喚魔法が、洛帝山にて遭遇したピクシー及び交戦する味方へ襲いかかった。
「ピクシーの紋章なんか、あっても誰も使わないよー」
リツカが不用意な発言を悔いたのは街道の町の宿屋で目覚めてからである。
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