時間が足りない!
ちょっと、途中までしか書けてないのですが、とりあえず上げといてしまいます。
すいません。
ルックが風を練り上げる。遅れまいと必死で流水の紋章を天にかざせば、発動するというより風に無理矢理引っ張り上げられる心地がした。顕現するのは二種の属性が組み合わさった水竜だ。通常では考えられない巨大な渦巻きへさしものアスフェルもぞっとする。
「……まぁ、悪くないんじゃない?」
「無、理、だ」
成果へそれなりに満足したらしいルックの横へ、アスフェルはどっと腰を落とした。立っていられない。力を根こそぎ吸い取られたような感覚だ。
「何で? 風烈牙より使いやすくなかった?」
ルックはきょとんとアスフェルを見る。汗ひとつかかず、涼しい顔で法衣の裾をそよがせている。
「使いやすいどころか。強力すぎるだろう」
アスフェルは前髪をがりがり掻くと左手をルックへ突きつけた。流水の紋章を宿したばかりの左手だ。手首から先がじんじん痺れて肘がわななき、指先は冷たくなっている。明らかにオーバーワークである。
小さく痙攣するアスフェルの左手には興味がないのか、ルックは凝った筋肉をほぐしでもするように肩を上下へ動かした。
「でも、ザコ敵を一掃できるし。ついでに僕らの傷も治るし。大は小を兼ねるって言うし」
「……そういう次元か? これが」
しれっと言い放つルックの態度にアスフェルはげんなり息を吐く。二人が歩く森は昼間でも薄暗いほど深いはずだったが、水竜が敵ごと木々を薙ぎ倒していったため、今は木漏れ日というには大きすぎる陽光がぽっかりと差し込んでいた。前方だけ見晴らしが良くなっている。
「僕一人でやってもいいんだけどね。左に流水付けると邪魔だから、あんたが宿しといてくれれば合成魔法もやりやすいなって」
「あのな。いくら上位紋章でもな、真の紋章と釣り合うわけがないだろう」
「僕にもっと力を加減しろって言うの」
「してくれ。腕を持っていかれるかと思った」
「えー」
まだ立てないアスフェルをつまらなさそうに見下ろして、ルックは唇を尖らせる。いやに子供っぽい。これだからこの紋章マニアは、とアスフェルは呆れて苦笑した。
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