第2話はもうちょっと坊ががんばるとこまで書くはずだったんですが、どうもうまくまとまらない…。
とりあえず完成したとこまで投下します。
ていうか続いちゃいましたすいません。
先にネタバレしておきます。
このパロは、シーナが見てる夢の中でシーナが坊と読んでる本、という設定です(笑)
彼が再び口を開いてくれたのは、俺の部屋でジャム入り紅茶を一口含んでからだった。
「あんた、死にたい?」
紅茶の感想は彼の態度が軟化したので自ずと知れる。だが剣呑な彼の発言が俺を手放しで喜ばせてくれず、俺は多少緊張しながら首を左右へ強く振った。俺に自殺願望はない。
「そ。でもあんた、このままだとあと十数分で死ぬことになってる」
彼はポンチョの下から首に提げた懐中時計を引っ張り出した。元は金色だったようだがひどくくすんでしまっている。手のひらへ乗せて、彼は蓋をぱちんと開ける。
暖房の効いた室内にも関わらず、彼は防寒具をきっちり着込んだままでいた。脱いだら、と勧めはしたのだが、彼はこれまで口を利くどころか目を合わせてくれさえしなかったのだ。おかげで俺は出会って間もないながら彼の性質の一部を知った。彼は他人に興味がない。他人へ自分がどう見られているかにも興味がない。そして、彼は寒がりだ。
俺の視線に気づかないのか、懐中時計の盤面を彼はじっと読んでいる。懐中時計を持つ手のひらは俺より一回りも小さい。腕も肩も細く、ポンチョに埋もれる顎のラインは肉付きが悪すぎて尖っている。桜貝の唇、血色の悪い頬。睫毛の影が頬にかかるほど長い。
俺は彼を見つめ、見惚れた。
「ほんとは、あんたは今日死ぬはずじゃなかったんだよ。だけど誤った死の時間が今日に定まってしまった。これから十二分後、あんたには死の機会が訪れる」
死。俺は彼の伏せられた瞳を凝視して、無言で話の続きを促す。
彼はついと懐中時計から顔を上げた。
「僕は死神。あんたを死から守るために来たんだ」
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